新たに登場したProToolsの無償版とCakewalk

Pro Tools(Avid)が今年2022年の9月末、Pro Tools Introの提供を開始しました。
(画像はメーカー公開詳細より引用)

 このイントロ版というのは無料で使用できるProToolsのことで、過去にも大昔にはMTR限定(MIDI無し)の無料版が提供されていたり、近年はProToolsのFirst版(使用トラック数こそ多かったものの、外部プラグインも使えずプロジェクトの保存すら自由に出来ずに、クラウド保存限定かつクラウド操作に後には更新料が必要にもなるという、使用することが困難なDAWとしての無料版)を出していたんですが、その後の比較的長い年数無料版の提供を中止していました。


それが今年の9月末に、ProToolsの機能バージョンアップとともに復活したというものなんですが、この無償(無料)版が過去のProToolsの無償版と大きく異なるのは、付属プラグインを除いて製品版と一切の基礎制作機能に制限のない形で提供がされたからです。

プロジェクトが自由に保存できるだけでなく、無償版にありがちのトラック制限についてもMIDIトラックが8つまで使用できるだけでなく、ステレオ・モノラルを問わずにオーディオトラックもMIDIトラックとは別に8つ使用することができ、インストゥルメントは社外AAXを含めて8台立ち上げることが可能で、同時にレコーディングできるマイク数も4本と、オーディオトラックをステレオで換算しても24トラック分使用できることもあり、音楽のスケッチとして使用する場合には十分過ぎるトラックの数と、世界の商用スタジオで使用されている同じ製品を同じ基礎制作機能のまま誰でも使用のできる、世界最高峰の無償ソフトになりました。

そしてこの製品にはマルチ音源のXpand!2が付属されていて、この製品はハードウェアのトーンシンセサイザーと同じように最大4つのトーンをオシレーターと見立てて一つのパッチ(音色)を作成していくタイプの製品で、その音は生ピアノこそ単体の無償ソフトよりも劣りますが、他のトーン一つ一つは音楽的に素晴らしいものが多く(これだけでオーケストラのスケッチなどにも対応できる音色の質もあり)そのまま使える質であったり、パッチとしてのエディットを施せばオリジナルの音色として十分に使用できる質を持っているものです。(特にスケッチとして使用する場合にはこの上ない製品です。)


それだけでなく、ProTools Intro本体にはリバーブやディレイ、EQなどの基礎的なProTools純正プラグインエフェクトやRewireプラグイン、AudioSuite(ミキサー経由ではなく波形にダイレクトに効かせるもの)など初めから34個用意されている他に、LOOPMASTERSによる数百種のループ素材がインストール出来るという至れり尽くせりの製品になっています。(Xpand!2やループ素材などは、AvidLinkというProToolsをインストールする際にも必要なオーソライズなどに使用されるログインソフトから行います。)


 ProToolsというソフトは、本当に音楽を多方面で良く知っており、元々自身が必要としていた制作機能のほとんどを10年以上も前から既に搭載済みでした。
しかし近年では主に新規はサブスクリプションに販売方法を変更されてしまい(例えばULTIMATEの新規永続ライセンス版は30万を超え、サブスクでの年間更新料だと10万円を超えます。永続ライセンス版であってもかなりの額の年間更新料が必要になるなど、昔はCPUベースのオーディオエンジンとはかなりの差があったのでiLokとインターフェイスドングル縛り以外は自由なLE版やM-Audio版などがあったのですが、現在は他社のCPU製品のDAWと同じくエンジンの差があまりなく、結果的に個人ではとても手の出せるソフトではなくなってしまいました)、サポートも高額なチケット制にもなってからは、必ず(対価としての)仕事があり常に作業をしているような商用のスタジオ限定製品に逆戻りしてしまい、私のようないつ作業を始めるのかわからない個人のユーザーであったり、腰を据えて何年も掛けて自分のペースで操作を覚えて使っていきたいという同じく個人ユーザーには選択肢にも全く入らないDAWになってしまっていたわけです。
(ちなみにサブスク系(メンバーシップ制)で製品にとどめを刺してしまったのが、その後販売終了したSONARシリーズです。後にどんな機能が付くのかも解らないのに初期費用として最上位グレードなどではかなりの高額な金額を出すことにもなり、後の年間アップデート権なども金額含めて予測もできず、そもそもそこまで縛られる程のソフトではなかったというか、そこまで縛られるなら選択肢は豊富にあり他に行くというのが消費者側、主に音楽作家側の判断にはあったとも思います。)

なぜこのサイトでこの事を取り上げたかというと、ProToolsにも音源定義ファイル(トーンマップ)機能があるのです。それはmidnamファイル(Pro Tools MIDI Patch Name File)と呼ばれるもので、ProTools内部にも比較的多くの音源定義ファイルがシンセメーカー別に用意されています。

しかしこの内蔵midnamファイルはとても簡素なもので、簡単に言えばユーザーバンクしか用意されていないような状態のファイルがほとんどで、このmidnamファイルを自作しようと思ってもその情報がほとんどなかったり(旧ProTools製品マニュアルにも自作方法は書かれてはおらず)、そもそも元々がMacソフトでもあるので、midnamファイルの相互変換ソフトがWindowsにはなかったりと、現状としてバンクを直打ちするしかなかったりもするのですが、ProToolsでは(純正では幅広い音源に対応していながらも)なぜこのようなことが起こるのか、それはProToolsのユーザー自身がエンジニアの方が多く、他環境でアーチスト作家側が既に作成した楽曲をトラックダウンやマスタリングをする為に使われていることが当然多く、音源定義ファイルを自作するような時間も機会もそれほど無いというのが大きな理由でもあると思います。

その一方で同じく無償として制限のない最高峰であったCakewalk(SONAR)の場合、自身が既に所有している複数のシンセサイザー製品の音源定義ファイルが、過去メーカーの提供と海外個人ユーザーの提供から完全な形で用意されていました。またファイルの中身を解析すると、書き換え・改変し易い事も有難い部分でした。その為、自身はABILITYで音源定義ファイルを作成(自作)することをやめたのです。


 音楽の本質としてこの上ない製品でもあるProToolsが機能強化とともにトラック以外制限なく使用でき、機能に足らない部分があっても日頃愛用している複数台のハードウェアシンセサイザーの音源定義ファイルが完全な形で用意されていることから、妥協しながら使用できる同じく一切の制限のない最高峰の無償ソフトでもあるCakewalk(SONAR)、これらをコストすら掛けずに併用しマルチホストや同期など上手に使用していくことになる場合、何でも良い人はこういった使い方をしないわけでもあり、こういった部分がいかにアーチスト側(作家側)にとって重要で、こういったことを製品が長い間気に留めず疎かにしてきたことで、該当するカテゴリのユーザーの場合にはどんどんと離れ戻ってこなくなる経緯をメーカーには一度じっくりと考えていただきたいと思う次第です。

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メーカー詳細

ABILITY4.0
2022年5月27日発売
(現行販売品/メインストリーム)


ABILITY3.0
2019年7月18日発売
(旧販売品/サポート中)

ABILITYユーザー間でお使いになっている自作トーンマップ(音源定義ファイル)を募集中!

ABILITYユーザー間でお使いになっている自作トーンマップ(音源定義ファイル)を募集しています。(写真はサイト制作者自身がABILITYで作成したトーンマップです。)詳しくは「 3.“音源定義ファイルの作成と共有”」「ABILITY本体でのトーンマップの作成機能」を閲覧ください。

Web更新情報

2022.10.04

「機能の要望」と、一部の「コラム」を作成・更新致しました。


2022.08.30

「機能の要望」と、一部の「topics」を作成・更新致しました。


―中略―


2022.07.18

サイトの作成と公開を致しました。


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