更新情報

・平成28年度会計報告を掲載しました。(2017.7.5)

・「活動報告」を追加しました。(2017.7.5)

・「交流会参加申し込み」ページを追加しました。(2017.5.1)

・交流会のご案内を掲載しました。(2017.5.1)

・第5回セミナーの講演要旨を資料ダウンロードに追加しました。(2017.2.7)

・第5回セミナーの講演要旨を掲載しました。(2017.2.7)

・「活動報告」を追加しました。(2016.11.27)

・「セミナー参加申し込み」ページを追加しました。(2016.8.31)

・第5回セミナーのご案内を掲載しました。(2016.8.31)

・「活動報告」を追加しました。(2016.6.26)

・平成27年度会計報告を掲載しました。(2016.5.17)

・交流会のご案内を掲載しました。(2016.4.24)

・第4回セミナーの講演要旨を掲載しました。(2015.11.29)

・「活動報告」を追加しました。(2015.10.31) ・第4回セミナーのポスターを掲載しました。(2015.8.24)

・第4回セミナーのご案内を掲載しました。(2015.8.24)

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セミナーより

2016年11月13日 第5回セミナー 講演要旨

『長期生存を可能としたALアミロイドーシスの治療の進歩』

     熊本大学大学院生命科学研究部・血液内科 奥野 豊 先生

★アミロイドーシスの定義

 ALアミロイドーシスというのは、MGUS(良性単クローン性γグロブリン血症)、無症候性骨髄腫、症候性骨髄腫に併発して、異常な形質細胞の遊離軽鎖(フリーライトチェーン)が全身に沈着しやすい性質をたまたま持っていて、全身の臓器に沈着して臓器障害を起こす疾患です。アミロイドーシスにはいろいろ種類があるのですけれど、最も多いのは「ALアミロイドーシス」であることがわかっています。65歳を中心とした分布を示し、一般的な症状が出てからの余命は、(何も治療しない場合)、1年から1年半ということですね。アミロイドーシスは放っておけば10年生存率は5%以下と非常に予後の悪い、死に至る疾患です。

★免疫とアミロイドーシス

 我々の身体の中に白血球というものがあり、身体を守っています。白血球がなくて生きていける人はいません。もし白血球が無ければ、必ずバイキンやカビ、ウイルスにやられてあっという間に死んでしまいます。白血球にはいくつか種類がありますが、1番多いのが顆粒球、2番目に多いのがリンパ球です。顆粒球は直接細菌とか真菌(カビのこと)をパクパク食べて殺しています。リンパ球にはT細胞とB細胞、NK細胞というのがあって、T細胞は指令を出して、隣のB細胞は成熟すると「形質細胞」というものになるのですね。これが今日のポイントとなる形質細胞ですけれども、この細胞が抗体(免疫グロブリン)というものを作ります。細菌、真菌(かび)、ウイルス、その他病原体のすべてに対して抗体は作られます。たとえば風疹に1回かかるともうかからないですね。それは抗体ができるからです。ワクチンを打っても同じで、1回かかったものにはかからない。「形質細胞」は、1度お目にかかったものには2度とかからないように抗体を作って身体を守ってくれる、そういう大事な細胞なのです。  ところが、人間、歳をとると、大体2人に1人はガンになるそうです。いろいろな細胞からガンが出て来ますので、この形質細胞もガンになってしまう訳です。形質細胞がガンになったものを『多発性骨髄腫』といいます。ガンになる途中で、大体高齢者の1〜2%(100人に1人か2人の方)は、この「形質細胞の良性の腫瘍(MGUS)」になります。この良性の腫瘍では殆ど何の治療もしなくても命にかかわることはありません。この状態から年に1%ぐらいの人が「多発性骨髄腫」という病気になります。おそらく(私の考えですが)ほとんどの抗体は悪さをしないのですけれども、たまたま「ある軽鎖を持ってしまったMGUSの人と骨髄腫の人たち」がALアミロイドーシスを引き起こすのですね。この抗体の異常な軽鎖(フリーライトチェーン)が組織にいって、変性して沈着するわけです。免疫グロブリン(抗体)というのは、こんなアルファベットのYのような形をしています。長い方が重鎖(Heavy chain)、こちらの短い部分が軽鎖(Light chain)で、重い鎖と軽い鎖が組合わさって、1つの抗体を形成しています。ですから病気のタイプにも重鎖(A,G,D,M,E)と軽鎖(κ、λ)の組み合わせでいろいろなタイプがあります。 ALアミロイドーシスの人の骨髄中の形質細胞は10%以下のことが多く、M蛋白はλ型が多いです。MGUSだからですね。一方多発性骨髄腫はκ型の方が多く、多発性骨髄腫の患者さんの約10%にALアミロイドーシスを合併することがあります。この場合は多発性骨髄腫の治療が優先されます。やはりアミロイドーシスを合併している骨髄腫は、していない場合に比べて予後が悪いです。

★ALアミロイドーシスの症状

 アミロイドが心臓に沈着しますと、高度のうっ血性心不全とか致死性の不整脈をおこして突然死を起こします。腎臓に沈着しますと、高度のネフローゼ症候群になります。ネフローゼ症候群というのは尿に大量に蛋白が出てくる状況を言います。尿中に血液中のアルブミンという大事な蛋白が大量に抜けてしまって、浮腫み、腹水とか胸水が溜ってくるというものですね。最終的には腎不全で透析になります。また、自律神経に沈着すると、起立性低血圧で、座っただけで頭から血が抜け落ちて意識を失うということが起こります。また消化管に沈着すると下痢や便秘等を引き起こします。また舌に沈着すると、口の中に収まらなくなって、くさび状に切って縫い閉じるということを3回ぐらいやった人もいました。いろいろな症状がありますけれども、とくに腎臓と心臓が非常に大きな問題になります。症状の出る頻度ですが、ネフローゼ症候群が一番多く、次は肝臓と脾臓、次は心臓が多いことがわかっています。


★アミロイドーシスを疑う所見と診断

 ALアミロイドーシスを疑う所見としては、非糖尿病性、非高血圧性のネフローゼ症候群(蛋白尿、低アルブミン血症、浮腫)、非虚血性心肥大、肝臓内に腫瘤を伴わない肝肥大、M蛋白の存在、免疫グロブリンの上昇などがあります。このような症状が現れた場合は生検を行い、コンゴーレッド染色でアミロイド沈着を確認し、免疫染色で、血清グロブリンの軽鎖のκあるいはγの沈着が見られれば診断が確定しますが、10%の患者さんは、κ、λ鎖が免疫染色で染まらないことがあります。その場合は熊本大学の神経内科アミロイドーシス診療センターに送ると、その赤く染まったところをレーザーで切り出して、Mass Spectrometryという機械でκ鎖とλ鎖を検出して調べることが出来ます。生検部位は胃粘膜、直腸粘膜、皮下脂肪織、腎生験(ネフローゼの場合)などで行ないます。しかし、いろいろ検査をしているうちに、病気が進んでしまう場合も多いので、暫定的にはコンゴーレッド染色でアミロイド沈着が認められ、免疫グロブリンの遊離軽鎖(フリーライトチェーン)のκ鎖かλ鎖の上昇を認めたら、ALアミロイドーシスと診断して治療を開始して良いとされています。

★ALアミロイドーシスの治療

 ALアミロイドーシスの治療は、とにかく、元(形質細胞が作る異常なフリーライトチェーン)を絶つというのが原則です。どういうことかといいますと、異常なフリーライトチェーンを作る形質細胞を抗癌剤で殺すということが大事だということになります。これに対して沈着してしまったアミロド蛋白をどうにか出来ないかというが、まだ良い方法(治療法)はありません。抗癌剤による治療に関しては、最初は「自家末梢血幹細胞移植+抗ガン剤(メルファラン)大量療法併用」という治療を10年以上やっていました。これによって形質細胞を皆殺しにし、その結果、沈着したアミロイドが溶け出すということですね。溶け出すには2年ぐらいかかるのですが、同じ頃、(2007年)「移植せずにメルファラン、デキサメタゾン療法を繰り返してやったほうが良い」という論文が出ました。これは、2007年にニューイングランドジャーナルに載った「自家末梢血幹細胞移植+メルファラン大量療法」と「MD療法(メルファラン+デキサメタゾン)」の成績を比較したのですが、メルファラン、デキサメタゾンでやると寛解が31%ですし、VGPR(寛解の手前)とPR(半分以上減った)も合わせると80%以上効きますよと言っています。でも、本当に全部の量(Full dose)でいけたら、このような成績ですが、心臓が悪かったり腎臓が悪かったりする人にこんな大量は出来ないのです。それで量を減らしてやった場合も出ていますが、量を減らしますと、効果のある人は20%まで低下してしまいます。


★多発骨髄腫の治療薬

 最近、多発性骨髄腫に非常によく効く薬が次々に開発されてきまして、1つはプロテアソーム阻害剤、ボルテゾミブという名前が一般名ですけれど、商品名が「ベルケイド」と言います。さらに今年9月に出てきた「カイプロリス」(カルフィルゾミブ)ですね。免疫調整薬のサリドマイドというのは妊婦さんが飲むと手足の短いお子さんが生まれてくるという薬で日本から抹殺されていた薬ですけれども、アメリカでこれがたまたま骨髄腫に効くということが発見されましてよく使われています。さらにサリドマイドの構造を色々変えて改良して作られたのが、「レナリドマイド」や「ポマリドマイド」という薬です。一般的にこれらの新規薬剤は3剤併用して使用するのが主流で、これらの免疫調整剤の中の薬を1つとメルファランやシクロフォスファミド(エンドキサン)、アドリアマイシンといった抗ガン剤を1つ組み合わせ、それに「ステロイド(デキサメタゾン)」を加えた『3剤併用療法』というのが、主流になります。ベルケイドが出て来た最初の頃は、ベルケイドに組み合わせるのは「メルファラン」と「デキサメタゾン」というのが主流だったのですが、私は、以前メルファランで二次性白血病になってしまった患者さんがいらっしゃって、二次発ガンが怖いということがありまして、最近はメルファランの替わりにシクロフォスファミドを使っています(VCD療法)。その他にはレナリドマイドを使ったRCD療法を主に骨髄腫の治療で使っています。さらに最近アメリカで、「抗体治療薬」というものが作られるようになりました。1つはエロツズマブ、もう1つはダラツムマブという抗体治療薬で、骨髄腫に非常によく効くと言われています。


★ALアミロイドーシス患者に対するVCD療法の治療成績(海外データ)

 2014年にBLOODという医療雑誌に発表されたのですが、ALアミロイドーシスの患者さん17人に対して、VCDという治療法をやったところ、12人が完全寛解、他の4名も半分以上フリーライトチェーンが減って、効かなかったのは1人だけというすばらしい成績です。同じ時の別のグループの成績でも65%の人が寛解に達したということで、実際に寛解に達した人は、その後ほとんど悪くなることなく全員が生存しているということです。 こちらは、もっと大規模なヨーロッパの「230例のALアミロイドーシス患者さんに対するVCD療法の治療結果」です。先ほどの17例の成績には及びませんが、寛解になった人が34%、少なくとも80%の人が良い反応をしたということです。(注:日本におけるベルケイド等の新規薬剤は、骨髄腫併発でないALアミロイドーシスでは現在も保険適用外です)


★ALアミロイドーシスに対するRCD療法の治療成績

 一方、「レナリドマイド」というサリドマイドの仲間の薬と、シクロフォスファミド、デキサメタゾンを併用した「RCD療法」の成績が出ています。レナリドマイドを併用した時の成績は、完全にもう何の治療も必要無いほど良くなったという人は20~30%で、生存率は50%、大体70%ぐらいの人に効くということで、このレナリドマイドを使った時はベルケイドを使った時よりも、どうしても成績が下がると言えます。


★VCD療法

 VCD療法というのは、4週やって1回休みですね。毎週外来に通っていただかなければいけないというのがちょっと問題ですけれども、大量メルファラン療法は1回やってしまったら、またやるというのはなかなか難しいのですが、この治療は再発しても何回でも出来るということが良いところだと思います。


★治療が継続出来なかった症例

 実際に私が直にお会いしたALアミロイドーシス患者さんは25名いらっしゃって、そのうち治療を継続出来た19例の患者さんの全生存率は良くなっています。当院の患者さん全体では約60%の生存率ですが、1クール以上継続して治療出来た人たちをみますと、皆さん元気に外来に来ていらっしゃいます。ですからフリーライトチェーンを速やかに下げてあげることによって、ALアミロイドーシスの人は長期生存が可能になってきたということです。  一方で、残念ながら治療が継続出来なかった為に、お亡くなりになった方々が何人かいらっしゃいます。80歳以上の高齢の患者さんや高度の心不全で手がつけられなかった患者さん、他院へ転院して悪くなった時に「サルベージ療法」が受けられなかった患者さんなどです。これらの患者さんが治療継続できなかった理由の1つに、ボルテゾミブの副作用があります。


★ボルテゾミブの副作用

 ボルテゾミブの服作用として私が一番多く経験したのが下痢です。ひどい場合、1日10回20回、下痢が起こります。高齢の患者さんの中には、もう1ヶ月ぐらい起き上がれないほど消耗してしまわれる方がいます。そういう人は、減量して使うようにしていますが、心毒性があるので、心臓の悪い人には使えないです。また、薬剤性の間質性肺炎というのが起こります。最初の移入の時に間質性肺炎で亡くなった方がいらっしゃるということで、やはりこれは大きな副作用なのですね。以前は末梢神経障害が一番大きな副作用だったのですが、皮下注射にすることでほとんど起こらなくなりました。


★レナリドマイドの副作用

 レナリドマイドはどうかと言いますと、白血球が減ったり、血小板が減ったりします。それから困るのは皮疹なんですね。皮疹が出る人は、どんなに頑張っても充分な量を入れられないことがあります。その他には深部静脈血栓症というのがあります。


★抗体治療薬の登場

 ここで吉報なのですが、最近アメリカの方では、抗体治療薬というのが作られまして、使われるようになりました。1つは『エロツヅマブ』です。「エンプリシティ」という名前で、もう11月の終わりには日本でも使われるようになると言われています。もう1つは『ダラツムマブ』という骨髄腫に非常に良く効く薬が出ています。この薬はまだ日本では、来年ぐらいにでるのではないかと言われています。今年のBLOODという雑誌にダラツムマブが非常に有効であるという論文が出ました。メイヨークリニックというアメリカの有名な病院からのものですが、この薬剤によって遊離軽鎖(フリーライトチェーン)が正常な値まで速やかに下がったというデータです。抗体というのは細胞に対する抗体ですので、たまにアレルギー反応が起こる人がいますけれども、先ほどお話ししたベルケイドとかレナリドマイドのような副作用は起こりにくいと考えています。ただ、こういった薬は再発や難治性の方にしか使えないという縛りがあります。


★治療継続が出来なかった患者さんへの対処

 このように治療が継続できた患者さんの成績はとてもよくなっているのですが、残念ながら、治療継続が出来なかった患者さんもいらっしゃいます。そのような患者さんに対する対策としては、高齢者、高度の心不全の患者さんに抗体治療薬のダラツムマブを使う、また致死的不整脈を起こすような患者さんには、ICD(植え込み型除細動器)を埋め込んで治療を継続することなどが有効だと考えています。また、転院して他の病院に行っても同じようにサルベージ療法が出来るように、治療の認知度を上げていくことが必要であると考えております。


★今後の課題

 なんといっても、ALアミロイドーシスは早期発見が重要で、早期発見のためには、医師がこの病気の事を知っていなくてはなりませんが、全国的にはこの病気の認知度がまだまだ低いと思います。心臓を診ている循環器内科医が心不全の患者さんを診た時に、また腎臓を診ている腎臓内科医がネフローゼの患者さんを診た時にアミロイドーシスの可能性も疑って『免疫グロブリン軽鎖(フリーライトチェーン)のκ値とλ値』と『M蛋白』を調べていただければ早期に診断できるのですが、今現在、なかなかそこまでやっているところは無いと思います。熊本大学では循環器内科医と腎臓内科医がこの疾患を知る事で、フリーライトチェーンを測定してくれるようになりました。そういう意味で、これからこの病気の認知度を高めていくことも重要な課題であると思います。




日本赤十字社医療センターからの最新報告(その1)

     『茶カテキン臨床研修について』  飯塚 聡介 先生


★本題の前に

 ALアミロイドーシスという病気はフリーライトチェーンが体中のあちこちの臓器に沈着して、臓器障害を起こす病気であるというのを、私はよく「雪だるま」に例えてお話していますが、これまでは、この積もった「雪だるま」が悪さをすると考えられていました。しかし最近、血中に流れているフリーライトチェーンそのものに毒性があり、それが臓器特異的に毒性を発揮して、速やかに臓器を障害するということがわかってきました。これは2014年のBLOODという有名な科学雑誌に載ったものですが、線虫の口がポンプの役割をしていて、そのポンプが人間の心臓の筋肉(心筋)に相当すると考えられていまして、線虫を使って心アミロイドーシスの実験を行なうということがやられています。1つだけその論文を紹介させて頂きます。この線虫にいろいろなフリーライトチェーンを投与するのですが、心アミロイドーシスの患者さんから取り出したフリーライトチェーンを投与した時だけ、ポンプ機能が障害されるということが書かれています。骨髄腫由来のフリーライトチェーンや心臓障害のないアミロイドーシスのフリーライトチェーンを投与しても、このポンプの機能は低下しないということで、どうもフリーライトチェーンには臓器特異性のようなものがあって、心臓を障害するフリーライトチェーンは心臓へ、腎臓を障害するフリーライトチェーンは腎臓へということがはっきりわかってきました。フリーライトチェーンは多ければ多い程、障害力が強くなります。このグラフのようにフリーライトチェーンの濃度を段々増やしていくと、そのポンプ機能が麻痺するということがわかっています。今まではフリーライトチェーンが徐々に徐々に降り積もっていって臓器機能を破綻に陥らせるということだったのですが、最近の研究では、速やかに(おそらく時間単位、少なくとも日単位で)臓器障害が起こるということがわかってきました。心筋細胞にフリーライトチェーンを振りかけると、まず心筋細胞の膜に付いて細胞の中に取り込まれ、心筋の核の周辺にいき、ミトコンドリアを障害して細胞死に陥るということがわかってきました。

★臨床研究結果の報告

 前置きはこれくらいにして、今日のテーマの臨床研究の報告です。この臨床研究は伊藤園様のご協力のもとに行うことが出来ました。抗ガン剤や新規薬剤も大事だと思っているのですが、それ以外のアプローチとして患者さんの病状の改善に繫がる食生活とか、そういうものが見つけられないかなと思って注目したのが日本茶です。緑茶の中にはカテキンが含まれていまして、そのカテキンは、立体構造に直すとこんな万歳したYの字の形をしています。これは、先ほど線虫にお茶の成分であるカテキンを投与して、だんだん濃度を増やしていった時に、ポンプ機能がどのくらい回復するのかというのを見たものですが、カテキンの濃度を少しずつ増やしていくと、それに伴って線虫のポンプの機能も徐々に徐々に回復するという基礎データになります。この研究をもとに今回の臨床研究を行っております。ヒトにおけるカテキンの研究は、2007年頃にドイツの医師ご自身がアミロイドーシスになって、カテキンを沢山飲んだら治ったという報告を有名な科学雑誌に投稿するまで全くありませんでした。その後、1つだけ、心アミロイドーシス患者にカテキンが有効という報告があがったのですが、例えば摂取の量が規定されていないとか、いろいろな問題点があったのです。それで、当院で本当に効くのかどうか試してみようということになり、伊藤園さんに大量のカプセル(33万カプセル)を作って頂いて、皆さんに飲んで頂いたということです。最終的に57人の方にエントリーいただき、「内服される群」と「内服されない群」をくじ引きで2対1に割り振りました。残念ながら、両方のグループでお1人ずつ心アミロイドーシスが原因でお亡くなりになった方がいらっしゃいますが、結果的には、飲まれたグループでは36名中30人、飲まなかったグループでは21人中18人が最期まで研究を完遂されました。日本人は緑茶を結構日常的に採っていらっしゃる方が多いので、もしかしたらカプセルを飲んでいない方も血中濃度が上がるかもしれないと思っていたのですが、それは全く上がりませんでした。  ここからは結論になりますが、当初はカテキン成分が心臓のアミロイドーシスに効果があることを期待して行いました。ですが、飲んだ方と飲まなかった方で基本的には差はありませんでした。ところが予想外に腎アミロイドーシスの患者さんでは尿中にアルブミンが沢山出ていた患者さんの尿タンパクが減少したという予想外の結果になりました。


★酸化ストレスと臓器障害

 また、非常に興味深いことがいくつか明らかになっています。血中のフリーライトチェーンのミトコンドリアに対する酸化ストレスを誘導して細胞死を誘導するという仮説があるのですが、血中の酸化ストレスはどうなっているのかを研究した人は過去に1人もいないのです。それで今回は皆さんの血液をちょっとだけ分けていただいて、血中の酸化ストレス状態がどうなっているかを見ました。このグラフの横軸が酸化ストレス、縦軸が抗酸化ストレスで、アミロイドーシスの患者さんのうち、1つの臓器だけ(心臓だけ、あるいは腎臓だけ)が障害されている患者さんをプロットしたものなのですけれど、酸化ストレスに応じて抗酸化ストレスも上がっていて、正の相関を示しています。それに対して、心臓と腎臓の両方が障害された患者さんでは、この関係が破綻して、逆転しています。これはお茶のカプセルを飲む前のデータです。また心臓についてもMRIを基準にして心臓の厚みを測りましたが、心臓の厚みが厚ければ厚いほど、抗酸化力が下がるということもわかりました。これもカテキンを飲む前のデータなのでカテキンに関係なく行っていたものです。この詳しいデータを知りたい方は、2016年11 月のIJH という科学雑誌に掲載されておりますので、ウェブ上で簡単に見ることが出来ます。簡単にまとめますと、当院のデータではEGCG療法は、心アミロイドーシスよりも腎アミロイドーシスの患者さんに有効であるという結果でした。また、まだこれは断定出来ないですが、血中の酸化・抗酸化力とアミロイドーシスの病態と関係があるかもしれないということです。課題もいくつかりありまして、消化管のアミロイドーシスで、特に便秘にこの緑茶カプセルが有効に働いたと感じられた方もいらっしゃったと思いますが、それについてのデータは残っていません。また、今回の結果をうけて、今度は腎アミロイドーシスをターゲットにしたEGCG療法をもう一度行って、その機序をもっと追求してもいいのではないかと思っております。以上です。




日本赤十字社医療センターからの最新報告(その2)

     『海外における治験の最新情報』  宮崎 寛至 先生


 本日はALアミロイドーシスの治験の海外情報ということにつきまして、ご報告させていただきます。初めに、ALアミロイドーシスの確立した治療法は世界中では今のところ、「造血幹細胞移植」、「MD療法」となります。もちろん、先ほど出ましたベルケイド、レブラミドも広く使われるようになりつつあります。そして更なる治療の改善を目指して、世界中の新たな臨床試験が行なわれています。本報告では世界中の主要な臨床試験の最新の結果を解説させていただきます。ここ数年に限っての進歩だけについてお話しますが、それだけでもかなりめまぐるしいものがあります。  まず、ALアミロイドーシスという疾患に対してMD療法、どのように効いているのかということをおさらいしてゆきます。MD療法を開始してゆきますと、異常な形質細胞は徐々に減少していきます。そうるすとアミロイドの「もと」となる蛋白が減って沈着したアミロイドもゆっくり溶けていく、これがMD療法についての根本になります。これに対して、自家造血幹細胞移植(自家移植)ではかなりの量の薬が入ります。自家移植を行なうと一気に悪い細胞が減っていきます。そうするとアミロイドのもととなる蛋白も一気に減る、そして同じように沈着したアミロイドはゆっくりと溶けてゆくということになります。


★自家移植とMD療法の最新報告

 さて、ここからは最新の報告になります。標準治療として広く行なわれている自家移植とMD療法、それぞれの治療効果について報告があがっています。2016年の7月、わずか4ヶ月前ですが、アメリカのメイヨークリニック(世界で一番この疾患を診ている医療機関の1つです)から報告がでています。移植の症例とMD療法の症例を今までやってきて実際どうだったかということをみています。MD療法では、およそ5年間の生存が半数で可能であるということを示しています。一方、メイヨークリニックで自家移植を行なった人に関しては約80%の人が5年以上生存しているという状況です。MD療法と自家移植の最新の報告ではおおよそこのような成績になっていますが、これは当院でもほとんど変わりはありません。5年で半数がMD療法、自家移植で80%と考えて頂いて良いと思います。同じ報告の中でステージごとに見ているのが、この表になりますが、メイヨークリニックではこの報告ではステージを3段階に分けています。1が1番進んでいない人たち、3になると最も進行してしまっている状態ということになります。ここでは移植もMDも混ぜ込んでみているのですが、やはり進行していると生存率はどんどんどんどん落ちてしまうんですね。もちろん、それでも半分くらいの方が生存しているのですが、やはり進行してしまった人は予後が悪いです。一方でステージ1の早めに見つかった、あるいは軽い人たちに関しては8割以上5年後も生存するということになります。メイヨークリニックの報告の結論としては、移植が可能であれば自家移植を行なった方がいいだろう、それから病気が進行する前に早期に治療を開始した方がいいだろうと結論づけています。


★ベルケイド治療についての海外報告(メイヨークリニック)

 さて、ベルケイドに関する報告が世界でも国内でも多数出ています。今回は海外からのということになっていますので、日本国内の報告は省略しています。こちらもメイヨークリニックからの報告で2年半程前のものです。ベルケイドはどのくらい効くのかという報告です。しかもこれは、進行期の症例だけに、最初からベルケイドを用いたらどうなるのかということをみています。最初からベルケイドを用いた人たちは、3〜4年で約半数が生存していると。このことから、もう進行してしまってもベルケイドは有効であろうということが考えられます。そしてこちらは治療の効果別にみているものになりますが、約15%がこの研究では完全寛解になっています。報告によっては60%が完全寛解に到達するというものも多数ありますが、進行期だけに限っていくと寛解率が15%くらいになります。しかしながら完全寛解に到達した症例は、4年経っても生存率は100%です。ベルケイドが効いた人は何年間も健康に生きる事ができるということです。ただ、ここで残念ながら効かない人に関しては、やはり進行期ではありますので予後はよくないというふうに考えられます。こちらは「進行期の中でも進行している人」と「そうでない人」を比較したものです。「進行期の中でも特に進行している人たち」に関しては残念ながら生存率は大きく低下します。しかし、「進行期の中でもそこまで進行していない人たち」に関してはかなり生存が期待できるということになります。以上の結果をもちましてアメリカのメイヨークリニックの結論は、ベルケイドでは進行期症例でも有効だというふうに結論づけています。しかしながら「進行期の中でも進行してしまっている」と、これは間に合わないかもしれないというふうに判断されています。


★ベルケイドとMD療法(イタリアの報告から

 さて、ベルケイドはアメリカだけではなくヨーロッパでもよく使われています。こちらは去年の5月のイタリアのパヴィア大学アミロイドーシスセンターからの報告です。このパヴィア大学というのは、最初にMD療法を開発したところで、アミロイドーシスではかなり有名な病院の1つです。これは早期と進行期、全症例にベルケイドを用いて治療したときの成績の報告です。同じように生存曲線が何個もでてくるのですが、ベルケイドにより5年間の生存は約半数でした。実はこのパヴィア大学、最初にMD療法を報告した時もおおよそ同じ様な成績を報告しています。残念ながらベルケイドを使っても、最初の1〜2年で再発、あるいは増悪するケースが出て来てしまうというのが彼らの報告になります。ベルケイドはよく効くのですが、必ずしも全員とはいわないというところですね。このパヴィア大学アミロイドーシスセンターの結論によりますと、『ベルケイドは進行症例でもある程度有効である。ただし、彼らが最初にやり始めたMD療法と比較して、ベルケイドがMD療法よりも効果があるのかどうかはまだ判らない』と結論づけています。アメリカのメイヨークリニックの報告でも「MD療法だけで約半数は5年以上生存している」ということですので、パヴィア大学では「MD療法とベルケイド」を比較して、本当にベルケイドが良いのかどうか白黒はっきりさせようということで、現在臨床試験を行なっています。結論はまだ出ていません。


★レブラミドに関する海外報告

 さて、次がレブラミドですね。どれくらい効くのかということも世界中でいろいろ調べられています。2015年5月、ペテェマというスペインの大学病院が集まってグループ化してまとめて報告しているものになります。こちらは、アミロイドーシスで移植が出来ない人を対象に最初からレブラミドをもちいて治療を行なっています。移植が出来ない人が限定なので、その時点で悪いことは予想されますが、効果は少し面白い結果が出ています。ステージが3まで進行している症例に関しては、レブラミドによる生存が半数以下です。これはMD療法よりも効かない可能性がある。しかしながら、逆にステージ1、2の早期の症例に関しては、全例生存しています。つまり進行してしまった人にはあまり効かないかもしれないけれども、早期の人には極めて有効である可能性があります。スペインのペテェマグループの結論になりますが、レブラミドは有効ではあるが、進行してしまう前に対処しなければいけないと言っています。


★アミロイド溶解薬(SAP)

 さて、ここからは、少し治療の根本が変わってきます。アミロイド溶解薬です。今まではおおもとのアミロイドを造っている悪い形質細胞をやっつけていく、そういった治療でしたが、こちらは全く違います。着いてしまったアミロイドを早く溶かそうという薬の開発になります。こちらも世界中でいろいろな臨床試験が行なわれていますが、およそ1年4ヶ月前のイギリスの国立ロンドン大学アミロイドーシスセンターからの報告です。ALアミロイドーシス症例に対して抗アミロイド抗体を用いて治療してみたと。イギリスの製薬会社であるグラクソスミスクライン社と共同で開発したといわれています。アミロイドシンチグラフィーという技術がありまして、身体のどこにアミロイドが溜っているかをみることが出来るのですが、この画像で治療前の段階で肝臓にかなりの量のアミロイド集積があるのが判ります。これに対して抗アミロイド抗体を使ったらどうなったかというと、わずか6週間で肝臓のアミロイド沈着はほぼ消失しています。当時はきわめて画期的な報告でした。今は臨床試験が広く行なわれるようになっていますが、まだ使える見込みはありません。研究段階です。ロンドン大学のアミロイドーシスセンターの結論になりますが、抗アミロイド抗体の治療効果はかなり有効です。わずか6週間で身体からアミロイドが消えるというのは、今まで苦労していた人たちにとっては、とても期待出来る治療法かも知れません。さらなる臨床試験を重ねていくというのが彼らの結論です。


★NEOD001(アミロイド溶解薬)

 実は、イギリスだけでなく、アメリカでもアミロイドを溶かす薬が開発しています。これは今年2016年の4月に出たメイヨークリニックからの報告です。こちらの薬はアミロイド抗体でも、薬の種類が少し違います。「NEOD001」という名前でプロテナ社とメイヨークリニックと共同で開発しています。この第1報が出たのが7ヶ月前で、月に1回点滴で入れていく薬なのですが、1年、2年と続けていると約60%の症例で心臓と腎臓で溶けて優位な機能改善を確認出来たというふうにいっています。溶ける早さに関しては、先ほどのイギリスの薬の方が早そうではあるのですが、こちらについてもやはり溶かす機能があると確認されています。メイヨークリニックの結論は、NEOD001はきわめて良い、有効であるということです。これは、全世界で第3相大規模臨床試験が進行中で、アメリカとヨーロッパでは現時点でもう参加出来ます。日本では、実はプロテナ社の方が当院に来られて、いろいろ話をして調整をしているところでです。この大規模臨床試験は残念ながらベルケイドが使えないと入れないので、日本ではまだベルケイドが保険で認められていないことから少し時間がかかっているようです。


★ダラツムマブ

 さて、先ほども出ましたが、『ダラツムマブ』についてです。これは形質細胞を直接攻撃する薬なので、最初のベルケイドとかレブラミドとかに近い薬になります。これは、つい最近(わずか1ヶ月前)のアメリカのメイヨークリニックで、「いろいろな治療をしたけれども、どれもあまり治療効果が無くて、すべてやり尽くしたにも関わらず悪くなっていっているALアミロイドーシスの患者さんにダラツズマブを使ったらどうなったか」という報告です。結果的には、フリーライトチェーンが一気に下がり、1年で正常化しています。何も効かなくなったとしても、このダラツムマブという薬が使えれば、完全寛解になる可能性はあります。しかしこれはあくまでも2例だけの報告です。メーヨークリニックでは多くの患者さんがいらっしゃいますので、もっと多くの症例に使っているはずです。ですから結果の良い人だけを報告して来た可能性もありますので、本当に効くかどうかは今後の臨床試験をやらないと判りません。この治療はアメリカでは承認されていますが、日本で使えるのは来年になりそうです。


★まとめ

 ALアミロイドーシスは新しい薬の開発が進んでいて、予後は今後も年々改善していくであろう。しかしながら、早期発見、早期治療がきわめて大事で、どんなに良い薬が出たとしても早めに見つけて早めに治療する事に勝るものはありません。疑ったら直ぐ診断、診断がつけば、すぐ治療、そしてより良い治療を行なう、これが今後も我々が行なうべき事だと思います。以上です。

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