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第1回セミナーより(講演要旨)

2012年3月18日 第1回セミナー 講演要旨

日本赤十字社医療センター 副院長 血液内科 鈴木憲史 先生

  アミロイドーシスについて

 アミロイドーシスというのは、大きく分けて4つあります。長い間、透析をしている患者さんに溜まってくる透析アミロイドーシス、それから今日の主題、『AL アミロイドーシス』、その他に、関節リューマチのような慢性疾患の患者さんにCRP という炎症蛋白が溜まるAA アミロイドーシス、特殊な老廃物みたいなものが溜まってくる全身性老人性アミロイドーシス、その4つです。

 この中で透析アミロイドーシスは、透析膜を替えれば良くなるだろうし、AAアミロイドーシスというのも、一応対策がある。でもAL アミロイドーシスに関しては今まで対策が無かったのですが、ここのところ、いろいろな治療が出来てきたのです。

 

AL アミロイドーシスとは

 骨髄に単クローン性、一種類の細胞が異常増殖して、増殖した形質細胞のライトチェーンというものが、主に心臓、腎臓、消化管、神経、この4つのところにどんどん溜まってくるという病気なんですね。まず、異常な細胞があることを確認する、この異常な細胞が本体なのです。この細胞がライトチェーンという蛋白を雪雲のように骨髄の中に降らせて、全身にそれが流れていって、主にこの4つの臓器、心臓、腎臓、消化管、神経につく。普通は、付いてもすぐに蛋白分解酵素とかで壊されて常にクリーンアップされているのですが、このアミロイドというのは、その蛋白に糖鎖という、砂糖漬けのような格好になっていて、いったん付くと溶けないので、どんどん積もっていく、厳しい病気だということで、厚生省の難病指定になっているのです。

 

アミロイドーシスの具体例

 これは舌の写真です。舌にこういう凸凹が出てくるのは、比較的特徴的で、舌がぼてーっとした感じになるんですね。アミロイドが付いているのを一番端的に見れるのが舌で、舌に歯形がついてくるのが、特に消化管アミロイドーシスの診断時に、重要です。これは、舌に(アミロイドが)ついている為に舌が厚くなっているのです。(中には)巨舌になってしまう人がいます。

 これは、骨髄です。(スライド写真)これが形質細胞で、核、細胞質ですね。この細胞質の中に工場があって、フリーライトチェーンという雪雲を降らせるわけです。細胞数はそんなに多くないのですけれど、せっせ、せっせと造る為に、この蛋白が流れていって、たとえば、腎臓の糸球体というところに、ベトーと付ついてしまうと腎臓の濾過装置がおかしくなって、ネフローゼになって、足が浮腫むようになってしまうわけですね。これが腎臓の場合です。今度は心臓です。正直なところ心臓についてくるのは、一番面倒ですね。急に不整脈が出たり、心臓に問題を起こす事があるんです。これは、心臓の筋肉の一部を採って、心臓にアミロイド蛋白というのがついているのを証明します。コンゴレッドというもので染めるとピカピカ光るんですね。

  端的にアミロイドは、見えるもので何に近いかといいますと、絹だと思うんです。例えば、木綿ですと光にかざしても色が変わらないのです。でも絹は光の角度によってピカピカって光りますよね。なんで絹のタンパク質が光るかといいますと、構造的に絹の中に特殊な蛋白があって、それが光るんですね。「身体の中に絹糸みたいなものが、いっぱい入っちゃった」と考えてみていいと思います。免疫グロブリンのL 鎖というものが着いているということから、これは心臓のアミロイドだと証明する訳です。

 

アミロイドーシスの診断

  どういうふうに診断するか。アミロイドーシスを疑う臨床所見は、例えば心不全、動悸、蛋白尿、浮腫、舌の異常などから、どこかの臓器を採ってみて、コンゴーレッド染色という特殊な染色をして、アミロイドがあるかどうかを確認する。胃や腸で見つかる人もいるし、そこで診断を確定する。その時に、重要なのが、フリーライトチェーンという検査で、これは、去年の10 月から保険適応になったばかりの検査で、それまでは自費だったので、あまりいろいろな施設では調べられていないと思うんですが、時々調べながら、みているわけです。フリーライトチェーンに異常があって、血液の中で異常蛋白があって、採った組織でκλ(カッパ、ラムダ)が染まる、あるいは電子顕微鏡で線維構造があるということから診断をして治療していくということですね。

 

アミロイドーシスの治療について

 今まではあまり治療法が無くて、『MP 療法』という骨髄腫の治療と同じ治療をやっていたのですけれど、そこに『末梢血幹細胞移植』という技術ができたのですね。これが出来るようになったという事が非常に大きな事なのですね。一応年齢制限はあるのですが、幹細胞移植ができる人ですと、まず幹細胞移植をして、MD 療法という点滴をして、血液学的に寛解になる。骨髄の中の良くないものを造っているのが、消えてくるという状態が血液学的寛解なんです。血液学的寛解になって、それがしばらく続くと、臓器の方の寛解になる訳です。ですから時間がかかるんですね。2、3年かかる。そして少しずつ、少しずつそれを良くしていくという格好になるんです。では、移植の出来ない人は駄目かというと、そうではなくて、移植の出来ない人にはMD 療法を繰り返していくと。(勿論、移植した人も繰り返していくのですけれども)。

 MD 療法を繰り返してやっていって、血液学的寛解に入って、臓器が良くなるのを待つ。まあ、雪が止んで、少しずつ時間がたって、春が来るのを待つという感じですね。そういうイメージで治療しています。

 

寛解とは

 血液学的寛解というのは、何かというと、『免疫固定法』という特殊な染色方法で、まず異常蛋白が消えるということが大事ですね。それからフリーライトチェーン(免疫グロブリンの軽鎖)が正常化する。そして骨髄の中の形質細胞が5%未満、(実際はほとんど1%未満になっている)、というので、まずこれが、第一目標。そして、その後に臓器の方の治療効果を見る訳です。

 たとえば、心臓のアミロイドーシスの人の場合はBNP あるいはEF、ポンプの力が良くなっているのを確認する。もちろん浮腫が取れてくるというのも大事です。胸水が溜まってこないというのも大事です。腎臓のアミロイドーシスの場合はアルブミンが正常化する。この中にもアルブミンが2くらいしかなくて、浮腫んでいる人もいると思いますが、頑張って治療をしていくと、3.5とか4くらいに上がってきて、浮腫がとれてくるんです。それにはある程度の時間が必要ですけれど、腎臓機能が良くなってくるんです。

 

長くメンテナンスが必要な病気

 でも完全寛解というのは、白血病などの完全寛解と違って、治っている訳ではなくて、その後のメンテナンスが必要なんですね。メンテナンスしながら、ずっと気長に治療を続ける病気だと思って頂きたいんですね。原因はある程度はわかってきているのですけれど、本質的な原因はまだわかりません。ただ、一生涯、長く経過をみていかなくてはならないという意味で難病なので、予後が厳しい病気だから難病という訳ではないんですね。

 

自己末梢血移植について

 自己末梢血幹細胞移植というのは、ある意味で、臓器再生医療的な側面があると思います。それは、心臓アミロイドーシスの人で、移植をして2ヶ月ぐらいすると、心臓の機能が良くなる人がいるのです。これは、造血幹細胞をたくさん入れるので、それが、臓器の再生をするということもあるのではないかと考えられる訳です。『自家末梢血幹細胞移植をやって、その後一年間以上、(MD療法など、いろいろやって)生存し、かつ完全寛解に到達した人は、10 年以上の生存がみこまれる』と。この『見込まれる』というのは、まだ、この治療が、この病気に使えるようになって、まだ10 年くらいしかたっていないということで、今後非常に期待出来るということです。さらに海外で、サリドマイド、ボルテゾミブ(ベルケイド)、レナリドマイド、これは、多発性骨髄腫で使われている新三薬で、非常に延命効果があると言われているものなのですが、これがアミロイドーシスの治療にも使われだして、非常に有効性が高いと言われています。

 幹細胞移植というのをやるときに、メルファランという薬を使う訳ですけれど、これがなかなか難しいわけです。大量にメルファランという薬を使えば使う程、寛解率が高い。けれども治療関連死亡というのも高いんですね。何の治療でも、こういう事があるのですが、ここのバランスを考えなくてはいけないのですね。薬の量を、個人差をみて減らしながら、抗がん剤を二日間に分けて、注射する。でもこのままでいると血が全部無くなってしまうので、予め、『幹細胞』という血をつくる種みたいな細胞を採っておいて、それを、その翌々日に戻す訳ですね。この幹細胞をレスキュー(救援隊)として入れると、二数間ぐらいで回復すると。この細胞がもう一度血を造るようになるというのが自家幹細胞移植。これは、出来る人にとっては有効な治療ですね。

 

アミロイド付着臓器と予後の関係(アメリカのデータから)

 これは、去年に出された、海外では一番実績のあるアメリカの病院のデータなんですが、臓器の中にどれくらいあるかというのを見てみますと、全421例で、1つの臓器、2臓器、3臓器と、たくさん付いている人と、少しだけ付いている人では、やはり臓器数が多くない方が一番いいと。やはり、腎臓につく患者さんが多いんですね。そして、いろいろな面で一番リスクがあるのが心臓だと思います。

 では、治療の結果は、というと、寛解した人が43%。非寛解が54%で、寛解した人と寛解しない人は、半分くらいですね。そして寛解を維持している人が72%、でも一旦寛解になって再発する人もいます。感染症とか他のガンを併発したり、心不全とかで亡くなる方も中にはあるわけです。特に心臓がらみの場合ですね。特に最初の一年間は、充分注意した生活が必要で、やはり最初のうちは比較的心穏やかにやっていくってことが必要だろうと思うんですね。

 

生存率

 実際に生存率がどうかということですが、昔は、インターネットとかを見ても、大体一年以内に亡くなるようなことが書いてありますよね。そういうのを読んだ事ある人は結構いらっしゃると思います。でも今はそうではないんです。これは、去年11 月に出た一番新しい論文なんですけれど、10 年生存率が、40%、まあ5割ぐらいであると。さらに治療がよくなれば、もう少し上がってくると思います。ですから、そんなに諦める病気ではない、ある程度いくと寛解になるか、ほとんど治癒に近くなる人もいると考えていいと思います。全生存期間の平均が今6.3 年以上になってきていますし、これを何とかさらに延ばそうといろいろ計画をしているわけです。

 基本的にはMD 療法あるいは幹細胞移植をやるということが大事だと思っています。それで完全寛解に入る人は、非常に生存率が良くなるんです。今まではこんな成績はなかったのです。自家移植やMD 療法をちゃんとやるようになったのは、海外で始まってから13、4 年、日本では10 年ぐらいです。以前は駄目だと思っていた病気が、この治療で、こんなに効いて、良くなるということが最近になって、分ってきたんですね。

 

アミロイドーシスは予後不良といわれた訳

 1986年にカエル先生という有名な先生が論文で、『アミロイドーシスは発症時期が不明な事が多いけれど、発症すると進行は速く、治療例の生存期間は10~14 ヶ月である。心筋障害、うっ血性心不全を認める症例の予後は6ヶ月以内である。‥』と発表したものが、未だに使われていて、今でもほとんどの雑誌や本とかに書かれている。でも、これは86年の話で、ちょうど88年ぐらいから、この病気に自家移植が始まったり、MD 療法、最近ではベルケイドとか他の治療がやられるようになって、それから治療成績が非常に良くなってきたんです。いろいろなところで半年とか1年と書いてあるのはこのことですね。

 

将来の展望と患者の会について

 現在、ある意味では、ここの病院がAL アミロイドーシス治療の受け皿的になっていると思うので、出来る限りの患者さんをみたいとは思っていますが、キャパシティにも限界があるので、これからは、どこにいても、何処の病院に行ってもしっかりとした治療が受けられるように、国内に何カ所か『拠点病院』のようなものを作って、そこにいつでも相談できるような体制を築いて行きたいと思っているんです。全国的にはまだ、この病気についての認識が少ないと思うので、出来るだけ啓蒙活動していけたらと思っています。

 もう10 年生存率が、6、7割となってきているわけですが、症例数が少ない医療機関ですと、やはり先生も不安になるだろうし、今までは、情報が無くて、先生も初めから治療を諦めていたことが多かったと思うので、そこに患者の会というのがあって、ホームページ等で情報を得られるというのは非常に重要で、私としては皆さんでそういうものを作っていったらいいのではないかと思いました。今回は初めての会なので、私がこんな形でやっている訳ですが、第2回目をやる時は、全国で 7、8人の、こういう病気に興味もって一所懸命やっている先生たちに相談員になってもらって、全国的なネットでいけたらいいなあと思っているんです。アミロイドーシスは絶望的な病気であると先生が先入観を持っていたら患者さんは直らないので、先生にも意識を変えてもらわなければならないし、患者さんも意識を変えてもらう。この会がいろいろな形で、励まし合いながらやっていける会になればいいなと思っています。以上です。  

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