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第2回セミナーより(講演要旨)

2013年6月9日 第2回セミナー 講演要旨

「心臓における問題点について」

  福島県立医科大学附属病院 血液内科 教授 小川一英 先生

 

★心臓の構造と働きについての解説

 心臓というのは筋肉の塊で、大きさは、ちょうど、掌に乗る位の大きさで、左心室、右心室、左心房、右心房という4つの部屋があります。心臓が収縮しますと、左心室から血液が大動脈に流れて、全身に血が巡り、様々な臓器に酸素を受け渡します。受け渡し終わった血液は、右心房に戻って来て、右心室に流れて、右心室から肺動脈に入り、肺に行きます。肺で酸素化された血液は左心房に戻り、左心室に行き、また動脈を通って全身を巡るというふうになっているわけです。

 

★心臓にアミロイドが沈着すると心臓はどうなるか

 心臓にアミロイドが沈着しますと、まず、心臓の壁が厚くなってきます。そして、まず心臓が広がろうとする力が低下してきます。そしてさらに進むと、収縮しようという力も低下してしまい、心不全という状態になるわけです。心不全の状態というのを、ポリタンクに入った石油をカートリッジに移すことに例えてみますと、ポンプのここのゴムのところが駄目になると、ポリタンクの方に石油が溜まった状態になってしまうんですね。身体でいうとゴムの部分が心臓で、ポリタンクが肺とか全身なわけで、全身に血液がうっ滞すれば、浮腫として症状が出てきますし、肺にうっ滞すると肺水腫になり、酸素なしでは日常生活が送れない状態になってしまうわけです。もちろん、血液が全身に十分にいかない訳ですから、血圧が下がったり、様々な全身臓器に障害を起こしてきます。

 心不全の状態を簡単に検査する方法が心エコー検査で、アミロイドーシスの患者さんは、正常の人に比べて、なんとなく拡張が悪い、壁がちょっと厚くなって、少しキラキラしている所も見えるといった所見があります。

 また、心臓は定期的なリズムで拍動しているわけですけれども、心臓のリズムは、刺激伝導系というのが司っています。その電気信号を外から捉えたものが心電図です。心臓にアミロイド蛋白が沈着しますと、様々な不整脈が出現してきます。その中でも怖い不整脈が、心室性の不整脈で、その中でも心室頻拍と心室細動というのは、非常に危険な不整脈です。

 刺激伝導系にアミロイド蛋白が沈着して刺激が伝わらなくなりますと、電気がうまく通らない為に、勝手に変な所で電気の通り道が出来て、興奮が旋回してしまって、脈拍が一分間に130 回以上にもなるというのが、「心室頻拍」です。「心室頻拍」が、さらに進行しますと、「心室細動」となることがあります。こうなりますと、心臓は止まっているのと同じです。

 

★心アミロイドーシスの病勢を見分けるマーカー

 心アミロイドーシスの治療の前に、アミロイドーシスが今どういう状態にあるか病期をわけるマーカーを見ます。そのひとつが、NT-proBNP という項目で、もう1つが、TroponinT という項目です。NT-proBNP というのは心臓の機能が低下すると重症度に応じて増加するという項目です。これが、330 を超えているかどうか、もうひとつのTroponinT という検査項目は、心臓の破壊の程度に応じて増加するというものです。これが、0.035 を超えるかどうかで、両方とも高いとⅢ期となり、最も進行した状態です。両方とも低いとⅠ期、どちらかが高いとⅡ期となります。こういったマーカーでアミロイドーシスをわけることがあります。

 

★AL アミロイドーシスの治療について

(1) 自家末梢血幹細胞併用大量化学療法(Auto-PBSCT)

 これは、G-CSF という白血球を増やすお薬を投与すると、骨髄から末梢血に幹細胞が流れてきます。それを成分分離装置という機械で幹細胞を採取し、凍らせておきます。その後、大量の抗がん剤を投与し、アミロイドを産生している異常な形質細胞を徹底的にたたく訳ですけれども、その際、正常な骨髄もダメージを受けますので、骨髄を助けるために、凍らせておいた幹細胞を解凍して移植し、骨髄をもう一度回復させるというのが自家末梢血幹細胞移植です。

(2) MD 療法(メルファラン+デキサメサゾン療法)  これは昔から骨髄腫に行われている療法で、幹細胞移植を上回るという報告も一部にはあります。

(3) 新規薬剤の使用

 多発性骨髄腫に使われるサリドマイドや、レナリドマイド、ボルテゾミブといった薬をアミロイドーシスにも導入していこうという動きが出て来ています。

 

★心臓における治療の効果判定の仕方

 効果判定は、血液学的な奏功、臓器奏功、2つの奏功で判定します。治療によって異常な形質細胞がどのくらい減ったかをみるのが、血液学的奏功です。また、治療によって臓器状態がどのくらい良くなったかをみるのが臓器奏功です。血液学的な奏功については、フリーライトチェーンを測定することで判断します。基本的には血液学的な奏功が得られれば得られる程、臓器奏功も出てくるということがわかっています。心臓に関しては、中隔壁肥厚が、2ミリ以上減少したとか、左心室駆出率が20%以上改善したとか、NYHA 分類で2 段階以上改善したとかいうことがあります。中隔壁肥厚と左心室駆出率は、心エコー検査で評価します。NYHA 分類というのは心不全の症状から見た分類で、Ⅰ度というのは、心臓の病気はあるけれども、症状は全くなくて、日常の生活は制限されないもの。心臓の病気があって、非常に軽度の活動でも何らかの症状を呈する、安静時においても心不全症状のあるというのがⅣ度です。その間にⅡ度とⅢ度があります。もう1つが、先程でてきましたNT-proBNP です。これが、30%または、300 以上減少すると臓器奏功があったというふうにいうわけです。

 

埋め込み型除細動器(ICD)

 ICD は、体内埋め込み式の除細動器で、心室細動が起こったと機械がキャッチすると、自動的に電気ショックを心臓の中から出して、心室細動を止めるという優れものです。心不全ということで入院してこられ、多発性骨髄腫に伴う心アミロイドーシスと診断された女性の患者さんに、この除細動器「ICD」を身体に埋め込む手術をして、自家移植を行ったところ、M 蛋白が消え、BNP も急速に下がり、心臓の状態が良くなりました。移植後ICD が一回も作動していないということから、移植治療が、心アミロイドーシスによる心室性不整脈に対しても有効だった可能性があると言えると思います。この患者さんを経験してから我々は、アミロイドーシスの患者さんに移植をする、しないにかかわらず、適用があれば、積極的にICD を埋め込もうと考えています。

  このように、心アミロイドーシスの治療というのは、循環器内科と密接に連携して行っていく必要があると思います。以上です。

 

 

「腎臓における問題点について」

 札幌医科大学附属病院 第一内科 准教授 石田禎夫 先生

 

 今日は『免疫グロブリンが沈着するアミロイドーシスの腎臓における問題点』ということですが、沈着臓器が、腎臓だけであれば、比較的予後が良く、治療し易いということで、腎臓に限らず、いろいろな患者さんの例をお話したいと思います。

 

★アミロイドの基になる蛋白とそれを同定する検査について

 (免疫グロブリンの図スライド)これは抗体で、ウィルスや細菌が入ってくると結合して退治するという役割をもっているものです。この長い方が「重鎖」でG、A、D、E、M の5種類あり、こちらの短いのが「軽鎖」で、κ(カッパ)とλ(ラムダ)の2種類あります。この軽鎖がAL アミロイドーシスの一番の原因になるわけで、κかλのどちらかが沈着するということになります。

  「電気泳動」をしますと、このようにピークが出てくる訳ですね。同じ様な検査で「免疫固定法」という検査では、このバンドで出てきます。(スライド)これは骨髄腫細胞又は形質細胞が、同じ分子量、同じ蛋白をたくさん産生していることを示しています。ですから治療の目標は、この蛋白を消す事で、直接、心不全の人の心臓を直すとか、ネフローゼを起こしている腎臓を直すとかするのではありません。まず、その蛋白を消す。それで消えたまま、一年、二年と経ちますと、沈着したアミロイドがだんだん溶けてきて、臓器不全を改善していくということになります。血液検査で見つからない人も、尿を調べると軽鎖が出ている事があります。ただ、この蛋白があるからといって、必ずしもアミロイドになるとは限らず、この中の何パーセントかがアミロイドになるということです。

 約2年前に「フリーライトチェーン検査」という、微量な蛋白を検出できる検査が出て来たことによって、治療後にどれだけ、「アミロイドの基」が減ったか判る様になってきたということ、これは非常に大きいです。

 では、「フリーライトチェーン検査」の感度が良いのであれば、それだけでいいかというと、そうではなくて、やはりいろいろな検査を組み合わせる必要があります。「免疫電気泳動」、「尿中、血中の免疫固定法」、「フリーライトチェーン」、これらすべてをやっても100%にならないのですけれども、これらの検査をすべて行って、「アミロイドのもと」があるかどうかを検査する形になります。

 

★臓器障害の出る頻度

  こちらはイタリアのデータで、こちらはアメリカのメーヨークリニックのものです。頻度的には心臓と腎臓が非常に多いという事です。

 

★腎アミロイドーシスとアルブミン値

 これは腎臓ですが、糸球体という尿を濾すところに沈着します。コンゴーレッド染色というので、ピンク色になっているのがアミロイドです。そして偏光顕微鏡で見るとアップルグリーンに光る、これでアミロイドが沈着しているという事がはっきり証明される訳です。アミロイド腎の人は、アルブミンがどんどん漏れてしまうので、アルブミンが低くなるわけですね。アルブミンというのは、水分を血液の中に引っ張ってきます。ですからアルブミンが下がってしまうと、どんどん血管から外に水が漏れてしまうということで、体重が増加したり、足が浮腫んだりということが起こり易くなるということです。  この症例は、移植をして、アルブミン1.7 が3.5 になるまで1.4 年間。こちらの例は、ベルケイドとデキサメタゾン、途中でCTD に切り替え、約2.6 年経かっています。

 比較的状態が良かった人でもMD8コースで1.5 年はかかっているということで、治療をやってすぐにアルブミンが上がるとか、腎臓が改善するということでなく、アミロイドのもとが消えると、だんだん腎臓または心臓の機能が良くなるということであります。 (※その他、多臓器沈着例、2度の移植例、消化器からの出血例、肩や腕に付着した症例など、多様な患者症例をたくさんご紹介いただきました。(編集者) ★

 

予後について

 今までは、やはり移植を出来なかった人は、ずっとCR(完全寛解)を維持するという事がなかなか難しかった訳ですけれども、最近は化学療法でも、2年以上CR を持続できるような時代になりました。全員ではありませんけれども、診断がある程度早くて、臓器障害があまり進んでいない患者さんに対しては、治療法がだんだん増えてきているという印象があります。やはり心臓の方の予後が悪く、年代ごとの予後は良くなっているわけですけれども、最初の6ヶ月に亡くなってしまう人は、あまり改善しないのですね。何故かというと、治療できる状態でないということです。効果が出てくるまでに最低3ヶ月とか時間がかかりますので、その間、身体がもたないと、アミロイドを正常にすることが出来ないということですね。やはり早期発見、早期治療が重要だろうということです。この表は、沈着臓器の数で、1 臓器、2臓器、3臓器と沈着臓器が多くなってくると、心臓が含まれてくるということで、予後が変わってくると思います。それでは、どのくらいアミロイドのもとが減ると予後が良いのかということですが、1つの目安としてアミロイドのもとのフリーライトチェーンが90%以上減るということで、最低50%は減らしたいということであります。予後のリスク因子としては、先程出た、心臓のマーカーとフリーライトチェーンの差で、この3つのリスクが少なければ少ない程、治療効果が出るという事であります。要は、心臓の機能が残っているかという事と、「アミロイドのもと」をどれだけ断ったかということです。

 

★標準治療と海外における治療方針など

 新薬が出る前にどんな治療があったかといいますと、「MP 療法」で、これは30 年以上多発性骨髄腫に使われていたものですが、それほど効果が上がっていなかったわけですが、「メルファラン+デキサメタゾン療法(MD 療法)」というのは結構効きます。新薬を使わない場合の標準治療法は、「メルファラン+デキサメタゾン(MD 療法)」と言って良いのではないかと思います。  最近、いろいろな方が、治療方針に対する意見を沢山出されています。例えば「移植しない人は、最初にMD 療法で、心臓の悪い人達には、出来るだけ早く減らすことが重要で、減らない場合は他の治療をしていき、心臓に沈着していない人は、あまり焦らないで、効果がなければ次の治療、ベルケイドの入っている治療をしていったらどうか」という意見や、「移植した人も良い状態になったら経過観察で、90%アミロイドのもとが減らなければ、他の治療をしましょう」とか、最近出たイギリスからのデータでは、「エンドキサン+ボルテゾミブ+デキサメタゾン」という治療をして、完全寛解にならなかったら移植というのでもいいのではないか」というように、その国によって保険適用でどの薬が使えるかという事もいろいろ影響して、治療方針にも違いがあります。絶対この治療でなければならないということはないのですけれども、治療の効果は、フリーライトチェーン検査で判りますので、効果がない場合は、治療を変えていくことが必要になってくると思います。最近、良い薬が出て来ていますが、今でも「自家移植」と「メルファラン+デキサメタゾン」が標準治療で、これ以外に新規薬剤を含めた治療が開発されているということであります。

 

 

「治療の経過について」

 社会保険京都病院 血液内科 副院長 島崎千尋 先生

 

★免疫グロブリンの構造についてのおさらい

 アミロイドーシスという病気は、アミロイドという物質が全身の臓器に沈着して臓器不全を起こしてくる病気で、免疫グロブリンのL 鎖(軽鎖)がもとの蛋白となってできたアミロイドをAL アミロイドーシスと呼んでいるわけですね。この軽鎖を作っているのは、形質細胞という血液細胞でリンパ球の仲間なのですが、異常な形質細胞が異常な軽鎖をつくって病気を引き起こしています。  免疫グロブリンは、長い鎖(H 鎖)と短い鎖(L 鎖)から出来ていまして、それぞれ細胞の中でバラバラに作られ、どちらかというと、L 鎖(軽鎖)のほうが沢山作られていまして、過剰に作られた軽鎖は、細胞外に分泌されます。

 この軽鎖には、κとλという二つのタイプがあり、κ型は「モノマー」(単量体)で、λ型「ダイマー」(二量体)であるという違いがあります。

 

★フリーライトチェーン検査について

 最近はこのL 鎖(ライトチェーン)を検出するキットが出てきまして、容易に測定することができるようになりました。健常者においては、κ型でだいたい20 ぐらいまで、λ型がだいたい26 ぐらいまでというのが正常値であります。健常者の場合、κとλは1 対1 で産生されていますので、比は0.26 から1.65くらいで、だいたい1前後のところにあると。ところが、もし異常な形質細胞が一種類のライトチェーンを作ってくると、κあるいはλのどちらかが非常に多くなってきて、κとλの比はバランスがくずれてきます。従いまして、κとλの比が異常であれば、形質細胞の異常な増殖があるという事を意味しているわけであります。通常の蛋白分画という検査では、ある程度の量のライトチェーンがないと検出できませんが、フリーライトチェーン検査では、微量でも検出できるということがありますので、「感度が高い」と覚えていただいたら良いと思います。

 

★予後因子について

 これは、メイヨークリニックの心病期分類ですが、アミロイドーシスの予後を予測する一番大きな要因は、心臓に病変があるかないかなのですね。このために心臓の状態を反映する検査が非常に重要になってまいります。もう1つは、dFLC と呼ばれている正常のFLC と異常のFLC の差です。この差が予後を反映するという事がわかって参りました。TroponinT、NT-proBNP とdFLC の3つを予後因子として、3 つとも異常なケースは予後が非常に悪いと判りました。この表でCR(完全寛解)あるいはVGPR(非常に良い部分寛解)を達成しますと非常に予後がいいですが、部分奏効(PR)ですと少し物足りないと。NR というのは効果がなかったということですので、やはり予後が悪くなっています。

 

★AL アミロイドーシスの治療のリスクと効果

(1)「自家末梢血幹細胞移植」

 この治療は、臓器障害を持っておられる患者さんに対しては、しばしば有害事象が出てくる事があります。これは、ボストン大学の421 例の成績ですが、このように移植をたくさんやっているところでも、治療関連死亡が11%にみられています。特に1994 年から2003 年のころは13%ありましたが、2004 年から2008 年は5.6%とかなり減ってきています。これは、移植の適用を充分に検討してやられるようになったからであります。これは移植の適用で、ボストン大学の基準とイギリスの基準ですが、このような適用基準で見分けますと、移植の適用になる患者さんはかなり少なく、10%から15%ぐらいで、多くの患者さんは、こういう移植治療が受けられない状態で見つかっているということになります。心病期分類が非常に大事で、このTroponinT とNT-proBNP が良いケースしか、移植はすべきでないということが言われています。(移植治療症例)

 血液学的効果が出てから早いケースですと3ヶ月、多くは6ヶ月の間に臓器効果が出てきますので、なかなか効果が出てこないと諦めることはありません。血液学的な寛解にもっていけば、引き続いて臓器効果が見られるということになります。

 

(2)「MD 療法」と「デキサメタゾン大量療法

 次に、標準化学療法(メルファラン+デキサメタゾン)と「デキサメタゾン大量療法」ですね。現在、この治療では、血液学的効果が大体67~68%、完全奏効が大体30%ぐらい、臓器効果が40~50%ぐらいにみられます。ただ、治療関連死亡が2~4%で重篤な有害事象というのはあります。その前に行われていたデキサメタゾン大量療法は、1サイクルで大体480mgの量の薬が入りますので、効果はある程度得られますが、この表のように、有害事象が非常に多くなるということで、現在は、デキサメタゾンの量を3分の1に減らしたメルファラン+デキサメタゾン療法が行われているということになります。 ○デキサメタゾン単独療法でも奏効があった症例の紹介 ○難治性で新規薬剤を用いたケース: MD 療法→自家移植→BD(ベルケイド+デキサメタゾン)→CTD(シクロフォスファミド+サリドマイド+デキサメタゾン)で改善。

 

(3) ベルケイド治療について

 次は、新規薬剤としてボルテゾミブ(ベルケイド)というお薬で、単剤では、血液学的効果が67%、CR29%、臓器効果が28 %。やはりデキサメタゾンと併用した方がより有効と言われています。併用しますと、血液学効果が70%を超えますし、臓器効果も大体30%見られ、治療関連死亡は0%と、移植に比べたら安全性は高いということかもしれません。このボルテゾミブの非常に有利な点は、血液中のフリーライトチェーンを非常に速やかに減少させる効果があるということで、1コースで急速に下がっていきます。多くのケースで1コース(4週間)ですが、血中のフリーライトチェーンを早く低下させるという意味でこのボルテゾミブは有用ではないかと考えられます。

※ 症例(ベルケイド+デキサメタゾン療法で改善した症例)

 

(4) レナリドミドについて

 最後のお薬が、レナリドミドで、これもデキサメタゾンと併用した方が、効果があります。血液学効果が40%ぐらいでCR が22%、臓器効果が21%ぐらいと報告されています。

※症例(レナリドミド+デキサメタゾン例)

 

★臨床試験について

 私達の厚生労働省の班会議では、このボルテゾミブと標準治療のメルファラン+デキサメタゾンを併用したBMD 療法というのを臨床試験としてやっています。28 日が1サイクルで2コース、有害事象がなければ、最大4コースやるという治療法で、現在、先進医療として全国で9施設に参加していただいています。もし希望される方がありましたら、それぞれの地区の施設に問い合わせていただけたら良いかと思います。当院も事務局をやっておりますので、こちらに問い合わせていただいても結構です。このように、アミロイドーシスの治療は、非常に改善していっていることを知っていただきたいと思います。

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