プロフィール

上野 芳江

秋田県出身、東京都在住の一般人。

高校時代、知らぬまに文芸部に入部させられ、小説を書き始める。

その後、細々とお話しを作り、現在に至る。

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ネクタイ

夏に更新してから、あっという間に4か月たってしまいました。

今回の短編も、20年くらい前に書いたものです。

書いた当時に少し昔のお話を想定していたので、子供の描写も古いですね。

お許しください。


9月の終わりに田舎の父から、電話で相談されました。

「親戚の三回忌に、どのネクタイを締めればいいか?」

母が亡くなって8年、男の一人暮らしもすっかり慣れて、ご飯の仕度は完璧なのに、

着るものだけは自信がなかったようです。

「三回忌なんだから、喪服でいいと思うよ。黒のネクタイがいいんじゃない?」

というと、

「そうか、黒か、ありがとう。」

といって、電話を切りました。


そして10月、無事に親戚の三回忌が終わったその翌週でした。

急に寒くなった日に、突然、父は脳溢血で倒れました。

幸いなことにご近所さんが異変に気づき、救急車で病院に運んでいただき、

私も7時間かけて田舎の病院に行ったのですが、その翌日、父は帰らぬ人となりました。


健康には人一倍気をつけて過ごしていたのに、亡くなるときは、あっという間です。

けれど、とても潔く、ちょっとかっこいいな、と思いました。

釣り、囲碁、ハーモニカ、大正琴、etc...

多趣味で、そのすべてを中途半端にしないで極めていた父を、誇らしく思います。


お父さん、ありがとう。

私も人生がんばるよ。





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